ポータブルなHD編集システムで、映画『ミルク』を完成

政治家ハーヴェイ・ミルクは1970年代のゲイの権利運動の象徴です。サンフランシスコでの社会運動とリーダーシップから「カストロ通りの市長」というニックネームで知られたミルクは、自らゲイであることを公言した初の著名なアメリカ人政治家で、政界でも革新的で前途有望な存在と見なされていました。

ミルクがサンフランシスコ市の市会議員に当選してまもなくの1978年、すべてが変わってしまいました。彼は、前市会議員であったダン・ホワイトにより射殺されてしまったのです。ガス・ヴァン・サント監督(『誘う女』、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』)による伝記映画 『ミルク』は、政治家としての台頭、サンフランシスコへの引越し、公職への当選、暗殺へ導いた要因などを追っていきます。

Avidシステムは、どんな映画にも手ごろで、Final Cut Proと同じくらいポータブルなんだ。- エリオット・グラハム、『ミルク』編集者

新旧の結合

エディターのエリオット・グラハム(『ラスベガスをぶっつぶせ』、『スーパーマン リターンズ』)は、サンフランシスコの撮影現場でも、監督の家があるオレゴン州のポートランドでも、またロサンゼルスでのフィニッシング作業でも、デスクトップとノートブック両方のAvidシステムでHDプロジェクトを扱いました。

グラハムはヴァン・サント監督の撮影したビジュアルスタイルでの編集をクリエイティブに楽しみました。彼は次のように語っています。「あるシーンからのデイリーが次のシーンのものと全く違うってこともあったんだ。例えば、あるシーンにはたくさんの資料映像があり、あるシーンにはとても少ない。監督はあらゆることを試したがったけど、それがクリエイティブな制作環境のために本当に役に立ったんだ」

制作した映像に加えて、ヴァン・サント監督はこの映画で1970年代の時代の雰囲気を強烈に訴えるためニュース映像や記録映像を多用しました。この素材は地元サンフランシスコの有権者や政治家、そして例えば全国的に知られたウォルター・クロンカイト(CBSイブニングニュースのキャスター)と同じくらいニュースキャスターたちを浮き彫りにしました。「過去の映像に映っている人々や場所と、私たちの撮影した35mm映像とを自由に行ったり来たりしようと思ったんだ。記録映像は、場所や雰囲気をはっきりさせるのに有効だったよ」

グラハムがテレビ局、ホームビデオ、博物館やドキュメンタリーの作品や記録映像に埋もれている間に、アシスタント・エディターのエリック・ヒルは大量の素材をまとめ続けました。ヒルは言っています。「記録映像のマスターは多様なフォーマットでやってきました。多くはデジタルベータカムで、ベータカムSPもありました」「元のフィルム素材は16mmかスーパー8で撮影されていて、それらをHDCAM SR 4:4:4に変換しました。それらがマスターになったんです」

映画はAvid DNxHD 36コーデックを使ってHDで編集されました。グラハムは前に映画『ラスベガスをぶっつぶせ』でも使ったことがあったので、ストレージを効率的に使えるDNxHD 36が、編集に必要なHDフォーマットの明瞭な映像を失わず、かつMacのノートブックでも大量のフィルム編集が可能なくらいコンパクトなメディアであるいうことが分かっていました。

実際のところ、彼はこのHD編集でディティールの確認から、カットの整理、監督とのシーンのスクリーニングまで全ての制作工程にポータブルなMedia Composerソフトウェアを使いました。「結局、半分かそれ以上をノートブック上でカットしたんです」とグラハムは語っています。「メディアをノートブックにどさっと取り込んで、サンフランシスコのアパートやポートランドのホテル、ロサンゼルスの自宅など、監督と私が一緒にカットを見られる場所であればどこででも作業ができたんだ。これはすごいことだったよ」

さまざまな編集システムを使ったことのあるヒルは、Media Composerシステムが制作を通してずっと、高品質なHDファイルを効率的に扱えることに感銘を受けました。「エリオット(・グラハム)は1.5TBの外付ハードドライブをノートブックにつないでいました。Avid DNxHDで制作したすべての映像やかなりの量の14:1のSD記録映像、オーディオファイル、音楽などを、その一つのドライブに入れることができました。全てのHDメディアを1ドライブに入れることができるなんて、考えたこともありませんでしたよ」

ヒルはAvid編集ソリューションがHDメディアの管理で顕著な強みを発揮したと考えています。彼は次のように語っています。「Avidシステムでは、何もかもがマスタークリップへリリンクされていることによる信頼性が際立っていました」「でもこの映画でAvidを使っていて何よりも素晴らしかったのは、やっぱり(Avid)DNxHD 36 (コーデック)です。とても効率がいいんです。AppleにはApple ProResがありますが、(Avid DNxHD)36みたいな低ビットレートのものがないんです。それがこの映画でAvid(システム)を選んだ理由でした」

そして画質も素晴らしかったのです。「編集室の40インチHDモニターで、(Avid)DNxHD 36はしっかりと画質を維持していました。(映画館での)試写には36と115でHDCAMに出力しました」とヒルは語っています。さらにコストについて言えば、最高画質の映写には、控えめに見積もってもだいたい2000万ドル必要です。Media Composerシステムから直接マスターを試写すれば、このオンラインプロセスで余分な時間もお金も使わず、コスト削減を実現しました。

ショーン・ペンの演技はただただ毎日素晴らしかったから、編集ではほんとに楽をさせてもらったよ。- エリオット・グラハム、『ミルク』編集者

素晴らしさの追求

Media Composerソフトウェアは、サウンドのチーム、特に、Pro Tools|HDシステムで仮のスコアを制作している音楽エディターと連携したワークフローも効率化しました。ヒルは次のように説明します。「ミュージックエディターは、すべての作業をロサンゼルスでやって、それぞれのリールにFTPかDigiDelivery経由でAAFファイルを送ってくるんだ。僕たちがそれらのファイルをAvid(システム)にインポートすると、Avidシークエンスのそれぞれの場所に正しく現れるというわけさ。ミックスダウンしてしまわなくても(違うオーディオトラックに)別の音素材を追加して、さらにサウンドを磨き上げることができたんだ。こういう行ったり来たりの交換が、エリオットと監督と音楽エディターの間に一層のコラボレーションの余地を生むんだ。」この統合されたオーディオとビデオ編集ワークフローは、ノートブックで余裕をもって対処することができたのです。

グラハムは、Avidのポータブル編集ソリューションが大きなメリットをもたらしているにもかかわらず、エディターがデジタルツールを選ぶ際に見過ごされていると感じています。「Avidシステムは、どんな映画にも手ごろで、Final Cut Proと同じくらいポータブルなんだ。Avidソフトウェアは大規模な映画にも小さな予算の映画にも、とてもリーズナブルだよ」と彼は語っています。グラハムは特に、どこにいても編集できる、ノートブックにも保存が可能な素晴らしいHD画質のAvid DNxHD 36コーデックが気に入っていました。「これのおかげで、最後のギリギリまでカットに時間を使えたんだよ」

ポータブルかつプロフェッショナルなHD編集の信頼性と利便性により、グラハムは、アワードシーズンに人々の注目を集めるこの作品で編集のクリエイティブな側面、特に主演のショーン・ペンに集中することができました。彼は、他の素晴らしい共演者たち、ジョシュ・ブローリン、エミール・ハーシュ、ジェームス・フランコなどの名前も素早く挙げながら次のように語っています。「ショーン・ペンの演技はただただ毎日素晴らしかったから、編集ではほんとに楽をさせてもらったよ」

グラハムにとってこのプロジェクトは忘れられないものとなりました。彼は言います。「こんなに面白い作品を作り上げるガス(・ヴァン・サント)は並外れた監督だね。キャストは素晴らしいし、面白い作品になるってことは最初から分かってたけど、本当に大切な作品ができたよ」「この映画に参加できて本当に幸せだった」