『007/慰めの報酬』:論争を巻き起こしたボンド最新作のアクションとエモーション

ジェームズ・ボンドの映画で働くことが、10歳の少年の夢であったりすることはあまりないでしょう。でもそういう場合もあるのです。少なくとも、エディターのマット・チェシーとリチャード・ピアソンが人気の007シリーズの最新作の編集への情熱について語ったところではその通りだったのです。もちろん楽しいことばかりではないようです。ボンド自身のように、エディターも簡単ではないミッションを成し遂げなければなりません、世界中の熱心なファンからの高い期待、投じられている多額の予算、そして遅れることが許されないスケジュール・・・

マーク・フォースター監督(『チョコレート』、『ネバーランド』)によるこのボンド映画に、観客は必ず満足と驚きを感じるでしょう。『007/慰めの報酬』は、お約束のアクションシーンやストーリー展開、さらには2006年の『007 カジノ・ロワイヤル』では省かれた、愛するヴェスパー・リンドを失った007の感じる予期せぬ内政的な性格劇のようなシーンも含まれています。

これまで一度もアクション映画を撮ったことのない監督は、これまでの007のおなじみの素材を新たな視点で見ながら、長年のファンの期待を満たすためのエディター達を選び出しました。ピアソンは次のように語っています。「これほどのヒット作品になると、その雰囲気や感情、そしてこれまでの歴史に敬意を表したいと思うよね」「でも同時に、ボンド映画にはこれまでなかったような新しいものも入れていきたいと思うものなんだ。」

監督と作業をしてカットを完成させるのに、たった5週間半しかなかったんだ。- マット・チェシー、『007/慰めの報酬』エディター

明快でシャープなアクション

フォースターの下で長年編集を担当してきたチェシーは、もともと映画に参加することになっていましたが、厳しいスケジュールと、物語の奥行きの深さから、これには2人の編集者が必要だろうということに気づきました。『ユナイテッド93』や『ボーン・スプレマシー』のクレジットに名を連ねるピアソンがすぐに副編集者として呼ばれました。

6ヶ月の制作期間は2008年1月に始まり、チリ、メキシコ、パナマ、イタリア、オーストリア、スペイン、イギリスを含む数え切れないほどの場所で撮影されました。「監督と作業してカットを完成させるのに、たった5週間半しかなかったんだ」チェシーは語っています。

編集チームが仕事量によってスケジュールから遅れないように、大規模なAvid編集ソリューションと共有ストレージソリューションがサポートしました。編集チームには、5人のアシスタントとビジュアルエフェクト専任のエディターもおり、ウィンドウズベースのMedia Composer HDが10システムとAvid Unity MediaNetwork共有ストレージ2システムが使われました。また、マーケティング部門でも、プロモーションビデオやその他の素材を準備するため2台のAvidシステムが使われていました。

エディターたちは制作中、ロンドン郊外のパインウッド・スタジオで作業していましたが、その後、ロンドンのソーホー地区に移りました。それぞれの場所に、Avid Unityシステムがプロジェクトとメディアを共有するために準備されていました。ビンはメールで交換することで更新されました。

チェシーは次のように語ります。「どこにいようが、とても健全でオープンドアなやり方だったんだ」「美術監督、プロデューサー、制作に関わるたくさんの人たちからたくさんのカットを受け取ったよ。それら全てをマークとすばやく確認し、みんなに回せばいいいんだ」

編集にはAvid DNxHD 36コーデックのクリアで鮮明なHD画像が使われ、映画制作チーム全体を助けたので、これは驚くに当たりませんでした。劇場試写にすら、Avid DNxHD 36が使われました。複雑な群集のショットや手の込んだセットの部分であっても、映像の明確さは見ごたえがありました。「(Avid)DNxHD 36では見えなかった物が、フル2Kでスキャンしたら見えたというトラブルは、一度もありませんでした」とピアソンは述べています。

結果的に、チェシーとピアソンはより多くのクリエイティブな挑戦に専念することができました。ピアソンは、映画の最初の部分のある複雑なアクション・シークエンスを引き合いに出して語っています。「追跡シーンが、複雑なルーブ・ゴールドバーグ・マシン(普通なら簡単なことを、一つ一つの工程にできるだけ多くの工程を踏む表現手法)に発展しています。ユニークな設定だったため、どんな風に作業しようか考えてみなければいけませんでした。背景のオペラや、厨房での銃撃戦など、こんなシークエンスを楽しめる機会なんて、きっともうないでしょうね。でも、こんな風に並外れた映像やパフォーマンスが詰まっている、これこそがボンド映画です。

(Avid)DNxHD 36では見えなかった物が、フル2Kでスキャンしたら見えたというトラブルは、一度もありませんでした。- リチャード・ピアソン、『007/慰めの報酬』エディター

素早い編集

チェシーとピアソンは、車や飛行機の中、またホテルの部屋でもフレキシブルに編集ができるよう、17インチのMacintoshノートブックにインストールしたMedia Composerソフトウェアも使っていましたが、監督の厳しい変更に対応するにはこのノートブックがとても役に立ちました。「映画の全てのカットをオーストリアに持ち込んで、そこでマークの承認を取ったり変更をしたりすることができました。たくさんの選択肢を持っていけば、決定を持ち帰ることができました。このおかげで、素早く撮影しビジュアルエフェクト部門に渡して、作業が流れ続けるようしておくことが出来ました」と彼は語っています。

Avid Unityシステムは、膨大な映画のショットを管理するには不可欠でした。「第一ユニット、第二ユニット、水上戦ユニット、空中戦ユニット・・・本当にたくさんのユニットがありました」と第一アシスタント・エディターのトム・ハリソン=リードは語っています。加えて第一アシスタント・エディターのロビン・ゴンザルベスも言います。「いつも、3大陸から送られてきた素材で作業しなきゃいけなかったんです」

簡単に拡張できるAvid Unityシステムのおかげで、Media Composerシステムやストレージを作業に応じて追加することができました。「Avid Unityシステムへのストレージの追加はスムーズで簡単でした。最初3TBから始めて、それから制作の終盤にかけて遅れを取らないようにするために3.5TBを追加しました」と、第一アシスタント・エディターのマーティン・コーベットは言いました。

複雑な映像とサウンド

ビジュアルエフェクト・エディターのデレク・バージスは、仮編集や5社のエフェクトプロダクションからの絶え間ないビジュアルエフェクト・フィルムを管理しなければなりませんでした。ピアソンは次のように語っています。「デレクはいつも何かを作り上げる方法を見つけては、素早くAvidと統合することができたんです」バージスはとりわけ、コンスタントなDPXファイルのインポートを合理化するMetaFuzeや、映画の中に942もあるブルースクリーン合成を扱うためのAniMatteを頼りにしていました。(ビジュアルエフェクト編集についてもっと詳しく

チェシーとピアソンは、Media Composerソフトウェアの24トラックまで可能なオーディオ機能を使って、映画のサウンドを扱うために手の込んだガイドトラックを作り上げました。「僕にとってサウンドは『仕掛けを作る』という意味でとても重要です」とピアソンは言います。Soundelux Londonのサウンドエディターであるエディ・ジョセフが率いるサウンドチームは、Digidesign Pro Tools|HDシステムを使い全てのサウンドワークを行いましたが、これにより映像のエディターとファイル交換が簡単になり、効率のよい制作プロセスが可能になりました。(サウンドワークについてもっと詳しく

大量のどんなタイプのメディアも扱える設備により、エディターは二つの物語のアーティスティックな側面だけに集中することができました。最初は必要に迫られてのことだったのすが、結局は「フィルムエディター」としての創造的な満足に変わったのです。

チェシーは語ります。「映画が大作になるほど、スケジュールはタイトなります。そうすると他のエディターと働く機会も増えます」「最初は他の人と一緒に編集するのは怖いと思っていました。というのは、編集というのはとても個人的で孤独な作業だからです。でもリックと一緒に働いたことはすばらしい経験でした。これは随分高いハードルだなと思ったことは、実際のところ、思いがけない喜びだったんです」

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