『セックス・アンド・ザ・シティ』 ドラマより長く、より大胆に、より面白く

キャリー、ミランダ、サマンサ、そしてシャーロットがこの数年間何をたくらんできたかを本当に知っているのは、ほんの少数の内部関係者だけでしょう。ゴシップを広めたり、いちゃいちゃしたり、ハイヒールで誘惑したり、考えただけでも興味がそそられるものです。 6 年間の HBO の番組放送を通してポップカルチャーのアイドルとなったこの 4 人の人気キャラクターを、今年 5 月の映画『セックス・アンド・ザ・シティ』の公開時に劇場で見ることができれば、何百万人ものファンは熱い興奮に包まれることでしょう。

この番組のエディターを長く勤めている 1 人であり、劇場公開映画プロジェクトのベテラン ( 『夜になる前に』『バートン・フィンク』 ) であるマイケル・バレンバウムは、映画の編集を任されると聞いて喜びました。「俳優、プロデューサ、ライターとはじめて通しの読み合わせをしましたが、これはみんなにとって完全にデジャヴでした。」と語っています。

しかし、見慣れているからこそ期待が大きくなるため、映画を制作する側にとってファンの期待に答えることは大きな課題となりました。「これは、新しいプロジェクトですが、同時に ( テレビシリーズと ) 一貫性がなければなりません。」とバレンバウムは説明しています。「つまり『この番組を劇場用の大画面に展開しながら、誰もがテレビの小さな画面で慣れ親しんできた感情をどのように引き起こせるか』が問題なのです。鮮やかな色、大胆な衣装、長くて質の高いストーリー、といった、映画が持っている要素をできるだけ持たせるようにしました。」

キャストとスタッフは、複数ストーリーの同時進行、流行を決定するファッション、最新の音楽といったストーリー展開の多くの側面に慣れていましたが、通常 30 分のエピソードを完全な劇場版に展開するには苦労する点もありました。「いつもは常に 30 分の限界がありました。つまり、常に指針があったのです。」とバレンバウムは語っています。「映画のためにすばらしい台本が作られましたが、長すぎるのではないかと心配しました。」

バレンバウムに課せられた最も難しい課題は、登場人物全員を十分にストーリーに登場させることでした。「 4 人のうち 1 人を省くわけにはいきません。通常のロマンティックコメディーでは、主人公が 1 人いて、もう 1 人は脇役にすることができます。しかし、この映画の場合、 4 人の主人公のバランスをとり、常に何かをさせる必要がありました。画面に登場する時間を全員に取り、十分な役割を持たせる必要がありました。」

バレンバウムは、すばらしいシーンを多数カットせざるを得なかったと認めています。「いい題材が非常にたくさんありました。削除されたシーンは、 DVD ( の劇場未公開シーン ) などでいつか日の目を見るかも知れません。しかし、これらのシーンは映画全体のまとまりを維持するために犠牲にしなければならなかったのです。これが常に難しい点でした。」

「つまり『この番組を劇場用の大画面に展開しながら、誰もがテレビの小さな画面で慣れ親しんできた感情をどのように引き起こせるか』が問題なのです。」
- マイケル・バレンバウム、 『セックス・アンド・ザ・シティ』 エディター

ノートブックコンピュータで負荷を軽減

バレンバウムと第1アシスタント・エディターのキャリー・パクコフが毎日の編集を行っていたニューヨークで 3 ヶ月撮影した後、ポスト処理をするため、編集チームはロサンゼルスに移動しました。 Avid Unity MediaNetwork 共有ストレージを使って、完全にミラー化されたストレージにリンクされた、 Media Composer の 3 システムがアメリカの太平洋側と大西洋側に設置されました。パクコフとその同僚の編集助手スチュアート・スパーリングも、ワークフローを拡大するために、 Macintosh のノートブックコンピュータにインストールされた Media Composer ソフトウェアを使用しました。

ソフトウェア版の Media Composer を使用するのは、パフコフにとってこれが初めてでした。今回は特に、テキストとセリフの音声インデックスを使用して、スクリプト自体を自動的にソースクリップに「同期化」する ScriptSync 編集ツールを試してみたいと思っていました。パフコフは初めて試用したときについて、「スクリプトは完璧にインポートされました。」と述べています。スクリプト全体に自動的にインデックス付けを行うだけでなく、パフコフは、 ScriptSync 機能を活用して、この番組のトレードマークになっている非常に長いナレーションを管理しました。「 ( 女優の ) サラ・ジェシカ・パーカーが、すべてのナレーションを 1 つの長いテークに録音したので、それをインポートしました。 ScriptSync でまず開始点を特定し、 ( すべての台詞とテークを ) 自動的に分離することができました。これにより、構成の手がかりが得られました。」

また、 Media Composer ソフトウェアは、総合的に時間を削減し、限られた時間の中で、より効率的な編集を可能にしました。メインの編集システムがふさがっていて、他の部署に引き渡すテープの作成のため使用できないときには、ノートブックコンピュータを使ってカットリストや OMF エクスポートが作成されました。「あるときは、正午前に 3 つの部署への引き渡し始めたものが、 7:00 には終わっていました。ノートブックを使用していなかったら 2 日はかかったでしょう。」とパフコフは述べています。

「あるときは、正午前に 3 つの部署への引き渡し始めたものが、 7:00 には終わっていました。ノートブックを使用していなかったら 2 日はかかったでしょう。」
- キャリー・パクコフ 、 『セックス・アンド・ザ・シティ』第1アシスタント・エディター

既存のものが新しく生まれ変わる

バレンバウムは、編集の側面、特にこのストーリーにとって新しい要素であった映画音楽で実験を重ねました。「番組では、常に最新の音楽を使っていました。映画では、フルスコアを作曲する作曲家のアーロン・ジグマンもいました。」

映画プロジェクトの通例どおり、バレンバウムは仮の背景音楽を作成し、また既存の音楽から適切なものを探し、編集中はそれらを代替として使用しました。このプロセスによって、この映画について驚くべきことが判明したのです。「音楽を通常流すドラマティックなシーンで、典型的なロマンティックコメディー用の音楽を試してみましたが、この映画にはまったく合いませんでした。この映画があまりに洗練されているため、そういう状況で通常使用される種類の音楽は受け付けないという感じでした。映画にぴったりくる音楽を見つけるのは容易ではありませんでした。最終的にアーロンが強いインスピレーションを受けたのは、私たちが作成した仮の背景音楽を聞いたときだったのです。」

観客にも、びっくりする仕掛けが仕組まれているようです。登場人物の過去や特徴はよく知られていますが、その最終的な結末は分かりません。「だれもがこれから何が起こるかを予想しながら映画を観ることでしょう。」とバレンバウムは言います。しかし、予想しても意味はないでしょう。この映画がその貪欲な登場人物に似ているとしたら、この映画が観客に残すものは、興味と欲求は尽きることがないということでしょう。

Credits: Craig Blankenhorn/New Line Cinema