ジェームズ・ボンドの憤怒のサウンド
ジェームズ・ボンド映画のサウンドトラックには、確かにそれと分かる、快適さとでも言えるようなものが存在しています。それは、有名な楽曲のモチーフや、カスタマイズされたアストンマーチンによるタイヤの悲鳴、徐々に満ちる紺碧の海の水などです。
しかし、新作『007/慰めの報酬』は、そのパターンから外れるかもしれません。アクション・シーケンスのサウンドは、これまで通りに複雑かつリアルなものですが、そのサウンドスケープは、オーディエンスをエージェント007の内なる世界へ、予想外の方法で導きます。スーパーバイジング・サウンド・エディターのエディ・ジョセフ氏は、「派手なアクションとボンドのテーマは、オーディエンスを十分に満足させるでしょうが、この映画はずっと思慮深く、パーソナルなものになっています」と語ります。「単にラウドで荒っぽいだけでなく、ときには全く逆の方向性にして、暴力的な事件が登場人物へどう影響するかを描写したのです」。
マーク・フォースター監督は、これまでアクション映画を手掛けておらず、長いアクション・シーケンスは、ありきたりだと感じていました。「3分や4分に渡るカーチェイスだと、最初の1分くらいで、マークには同じものに聞こえ始めます。そして、退屈してしまうのです」とジョセフ氏は解説します。「そこで我々は、少し違う方向へ進むようなサウンドが無いか、探し始めました。例えば車がスライドし、誰かが拳銃を撃ったら、それを違う方向へ進むための離脱点として使うのです」。
サウンド・デザイナーのジェームズ・ボイル氏は、そうしたシーケンスを翻訳するための新たな方法を見つけることに長けており、ボンドの内的な世界を顕在化させました。「あるシーンでは、大爆発のサウンドを、音楽やサウンド・デザインへトランジションさせ、記憶の断片としました。リアルな要素から、物語性豊かな、非常に知的で感情的な要素へと、ゆっくりとドリフトさせたのです」と、ボイル氏。
自分達ならではの方法で、可能な限り本物のサウンドとするようにトライしました。 - エディ・ジョセフ氏 (『007/慰めの報酬』スーパーバイジング・サウンド・エディター)
最高の完璧さ
映画全体を通して、最もリアルなサウンドを使用することに、信じられないほどの注意が払われました。「自分達ならではの方法で、可能な限り本物のサウンドとするようにトライしました」と語るジョセフ氏のチームは、車や飛行機、ボートやその他の要素の正確なサウンドをキャプチャーするため、最大限の努力を行ったのです。
サウンド・デザインとサウンド編集、ダイアログ、フォーリー、音楽編集、ミキシングのあらゆる局面がPro Tools|HD® システムで扱われており、その作業の大半はロンドンのSoundeluxをベースとしていました。また、ファイナル・ミックス、サウンド・エフェクトとダイアログのプリミックスでは、複数のICON™ コンソールが使用されました。ボイル氏は、Digidesignコンソールが提供するハンズオン・コントロールと効率について、「ICONは、Digidesignコンソールと細部までコミュニケート可能な、正に唯一のコンソールです」と述べています。「その他のコンソールもそうであろうとしていますが、同じレベルには到達していません」。
実際のところ、その多くがフリーランスであるサウンド・チームの様々なメンバーにとって、Pro Tools|HDシステムは必要条件でした。一貫したデジタル・オーディオ・プラットフォームにより、チーム全体が離れた場所でもファイルを簡単に共有でき、ときにはDigiDeliveryファイル交換システムを経由することで、ワークフローが体系化され、14週にもわたるオーディオ・ポスト・スケジュールが予定通りに進められました。
例えば、ロンドンから160 km離れたReal World Studioをベースとする、リレコ・ミキサーのマイク・プレストウッド・スミス氏が、リバーブなど特定のプラグインを使った、プリダブ・テクニックを開発。Soundeluxのオーディオ・スタッフも、同様のセットアップとプラグインを使用しました。「こうした方法で作業することで、ずっと効果的に作業を行えました。それにより、クリエイティビティに多くの時間を使うことができたのです」。
リアルな要素から、物語性豊かな、非常に知的で感情的な要素へと、ゆっくりとドリフトさせたのです- ジェームズ・ボイル氏 (『007/慰めの報酬』サウンド・デザイナー)
Soundelux Londonのクリエイティブ・ディレクターであるジョセフ氏は、Pro Tools softwareの最新リリースを使用して、最新のプラグインとワークフローの向上を活用することを習慣としています。チームは、このプロジェクトを通してPro Tools 7.4 softwareをスタンダードとしました。
ボイル氏は、Pro Tools|HDシステムを高く評価しており、特にICONコンソールと組み合わせた場合には、長編映画のサウンド・デザイン・ワークにおける必需品となっています。「Pro Toolsは、我々にとってスタンダードです。私は、相当長い間にわたって、Pro Toolsだけを使っています。オートメーションやプリミキシング、プラグインの使用方法など、全て我々のお決まりの方法になっており、これこそが作業方法なのです。セッションはすべてプリミックス・レイアウトやパン、バランスを決めた状態で(ミキシング)ステージへ持ち込まれます」。
ボンドも理解しているように、洗練された小道具類が重要な場合もありますが、クリエイティブ面における問題を解決するスキルは唯一無二のものであり、9人のサウンド・チームは、ストーリー性を備えたスキルにより、複雑かつ革新的なサウンドトラックを生み出しました。「監督は、典型的なボンド映画のサウンドにはしたくありませんでした」と語るジョセフ氏は、自身のチームがチャレンジを成功させたと確信しています。ミスター・ボンドは、新たなミッションを成功させたようです。
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